株式会社が作りやすくなりました
1.最低資本金規制の廃止
従来の商法では、株式会社1,000万円、有限会社300万円の資本金がないと、原則として会社を設立することができませんでした。もちろん、中小企業新事業活動促進法という法律によってこの最低資本金規制の特例は認められていましたが、創業者としての確認、毎年度決算書類の提出などの手続や5年以内に最低資本金に到達しないと解散させられるといった条件が課せられます。
会社法では、この規制が廃止され解散条件等も設けられていませんので、ネットビジネス、学生ベンチャー、SOHOなど少額な資金で創業できる事業を行う会社が設立し易くなりました。
2. 類似商号規制の廃止
今までは、同じ市町村内において同一の事業目的を持った類似の商号を使うことは禁止されていました。この影響で、会社を設立するとき法務局の審査が厳しく時間もかかってしまいました。
会社法では「同一所在場所の同一商号」こそ禁止していますが、商号や目的についてはかなり自由に設定できるようになりました。ただし、不正な目的を持って故意に同じ商号を使用したり、知名度が高い企業の商号を拝借することは他の法律で禁じられています。
3. 払込保管証明書から残高証明書等への変更 今までは、資本金が確かに出資されたことを金融機関も責任を負う形で証明するために、設立の登記申請時に払込保管証明書の添付が必要でした。金融機関はなかなか証明書を発行してくれず高額な手数料も支払わなければなりませんでした。また、厳密な登記審査が終わるまでは資本金を使うこともできませんでした。
会社法では発起人が全額出資する発起設立の場合は、金融機関への資金払込の証明は、残高証明等の方法で可能になりました。これにより、残高証明書の取得は短時間で可能ですので、すぐに資金を運用することも可能になります。
様々な株式の発行が可能に
1.株式の譲渡制限
今までは、株式会社が発行する全部の株式について譲渡による取得は株式会社の承認が必要とする譲渡制限を設定することは可能でした。つまり、譲渡を制限するか、しないかのどちらかでした。
会社法では、上記のように一部の株式にだけ譲渡制限を設定することができるようになりました。株式の譲渡制限は、発行する株式に対して設定するか否かで、その株式会社の選択肢を豊富にしたり規制をかけたりする基準になります。株式譲渡の承認機関は株主総会(取締役会を設置する会社では取締役会)となります。
発行する株式に譲渡制限を設定していない株式が一部でもある株式会社を「公開会社」、 発行するすべての株式に譲渡制限を設定している会社を「公開会社でない株式会社」(非公開会社、譲渡制限会社と呼ばれることもあります)といいます。
2.種類株式
上記の譲渡制限株式以外にも、株主が株式会社に対して株式の取得を請求できる株式や、株式会社が一定の条件を満たしたら株主から株式を取得できる株式を発行することができます。さらにそれらの条件を複合した株式も発行できるなど、様々なバリエーションの種類株式の発行が可能です。
3.相続人等に対する株式売渡し請求
従来の商法では、相続や合併などによる株式の移転を制限することはできませんでした。
会社法では、定款に定めることにより相続その他により株式を取得した者に対して株式会社はその株式の売渡しを請求することができますので、株式会社にとって好ましくない者が株主になることを回避できるという規定が新たに設けられています。
4.株券の発行
今までは、株券発行が原則で、定款で定めることにより株券を廃止することが可能でしたが、会社法では不発行が原則となり、逆に定款に定めることにより発行することが可能になります。
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会社の個性に合わせた自由な機関設計
1.株式会社の機関設計
従来の商法では、会社の機関設計はその類型と規模によって決定されていました。
また、取締役会と監査役の設置が義務付けられていますので、最低でも取締役三人と監査役一人が必要でした。
会社法では、その規模と株式譲渡制限の有無により、数種類の機関設計パターンから、その会社が任意に選択することが可能になりました。
会社法における機関設計の基本パターンは以下のようになります。
会社法施行後の機関 |
公開会社 |
公開会社でない
株式会社 |
中小会社 |
大会社 |
中小会社 |
大会社 |
取締役 |
× |
× |
○ |
× |
取締役+監査役 |
× |
× |
○ |
× |
取締役+会計参与 |
× |
× |
○ |
× |
取締役+監査役+会計監査人 |
× |
× |
○ |
○ |
取締役会+会計参与 |
× |
× |
○ |
× |
取締役会+監査役 |
○ |
× |
○ |
× |
取締役会+監査役会 |
○ |
× |
○ |
× |
取締役会+監査役+会計監査人 |
○ |
× |
○ |
○ |
取締役会+監査役会+会計監査人 |
○ |
○ |
○ |
○ |
取締役会+委員会+会計監査人 |
○ |
○ |
○ |
○ |
※公開会社でない株式会社においては、取締役会の設置は任意
※従来のみなし大会社は廃止
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2.取締役・代表取締役
3.監査役
- 監査役の員数
監査役会を設置する場合は、三人以上の監査役が必要となり半数以上が社外監査役であり常勤監査役を選定しなければなりません。
- 監査役の任期
原則は4年ですが、公開会社でない株式会社については、定款において監査役の任期を最長10年まで延ばすことができます。また、会社設立直後の監査役の任期についての規定(最長1年)は廃止されました。
- 監査の範囲
原則は取締役の職務執行監査ですが、公開会社でない株式会社については、定款において監査の範囲を会計監査に限定することができます。
- 監査役の解任
会社法でも監査役の解任決議は特別決議(3分の2以上の賛成が必要)による必要があります。
4.会計参与(新設)
『会計参与』は、今回の会社法で新設される会社の機関です。
会計参与とはどのようなものなのか、その概要を見てみましょう。
- 会計参与の設置
株式会社は、定款で会計参与を設置する旨を定めることができます。
- 会計参与の資格・選任
会計参与は、公認会計士(監査法人を含む)または税理士(税理士法人を含む)でなければならず、株主総会で選任され、その任期・報酬等は取締役と同様の規律に従います。つまり、定款に定めることによって任期は最長10年、報酬は株主総会において決議されます。
- 会計参与の職務等
会計参与は、取締役・執行役と共同して計算書類を作成します。また、株主総会において計算書類に関して説明する義務を負います。
- 会計参与の責任
会計参与の会社・第三者に対する責任は、社外取締役と同様の規律が適用され、株主代表訴訟の対象となります。
- 会計参与の登記
株式会社は、会計参与を設置する旨および会計参与の氏名または名称を登記します。
例えば、顧問税理士が社外の立場で計算に関与するのと比較すると、会計参与は会社の機関であり重大な責任を担うわけですから、金融機関等からの対外的信用は得やすいと言えます。
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